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2025.05.13

SUMMIT|SmartHR初の全社表彰制度。批判も覚悟で目指した組織のカルチャーと一体感

SmartHRでは社員数が1000人を超え、会社としてのカルチャーや一体感の維持に課題を感じはじめていました。その解決策のひとつとして生まれたのがSmartHR初となる全社表彰制度「SUMMIT」です。

初回開催で満足度90.6%という高い評価を得たSUMMITについて、立ち上げの背景から実施後の振り返り、今後の展望まで、担当者のカルチャー室 arakinさんとブランドコミュニケーションデザイン部 doseさんにお話を伺いました。

1,000人超の組織となり、批判は覚悟でカルチャーを守るために実施を決定

ー そもそも「SUMMIT」が始まったきっかけを教えてください。

arakin)1,000人を越えたあたりから会社としてのカルチャーや一体感が薄まってきているという課題がありました。そのなかで、それを打破したり一体感を作る、めざしていく方向を揃える、という目的達成を検討するなかで、表彰制度(アワード)はひとつの手法としてありかもしれないという話は出ていました。

arakinさん画像_1

ただ、そのときに具体的に企画が進むことがなかったのは、アイディアとしては検討の余地があるけど、そういった制度がなくても大きな問題にはなっていなかったことと、2017年頃に超ライトな形でMVP制度をやってみたものの、全然機能せずすぐにやめてしまったことが要因です。

SmartHRはワンプロダクトの会社なので、基本的に全社員が連携して動いています。そのなかから誰かを選び、評価をするのは難しいし好ましくないな、という考えはありました。

でも1000人を越える規模になり、別の課題も出てきたり問題の発生を未然に防いだりということを踏まえるとそうも言っていられず、2024年の8月に改めて表彰制度を真剣に考えるMTGを開催し、2週間ほどの調査を経て「反発はあると思うが、それでもやる意義はありそうだ」となったんです。

目指したのは、3つの大きな課題を解決すること

ー SUMMIT開催にあたって、一番目指していたのはどんなことでしたか?

arakin)まず、本当にやるべきなのか、の検証を行いました。他社の事例を参照したり、自社の課題を洗い出したりしながら、表彰制度が解決したい課題とちゃんとリンクするか、を考えたんです。

そこで3つの大きな課題が見えてきました。

① SmartHRにはすごく優秀で活躍している人がたくさんいるのに、社内でも意外と知られていない。そういった人が埋もれてしまうことは、当人のモチベーションやエンゲージメントの向上機会の逸失になっている。

② 活躍している人のナレッジが広くシェアされていない。より高いレベルを目指せる人にとって、ブレイクスルーの一助となってほしい。

③ 育成文化がまだ発展途上である。育成に関する課題には、人事部を中心に全社で取り組んでいますが、受賞を目指して頑張る人を周囲が育てたり、受賞者が周囲を育てたり、というSUMMITを起点としたムーブメントを一助にしたい。

という3つです。

これらの課題が見えてきて、どういった賞を設定すればその課題が解決できるのか、の議論をしました。そこが一番大変でしたね。賞は「こんな賞も設置したい」と増えていく傾向にありますが無作為に増やすことはせず、課題解決に繋がる賞のみにしたのと、受賞の価値を高めるために賞の数は絞ることにしました。

SUMMIT当日の様子画像_1
SUMMIT授賞式で入場してくる受賞者画像_1

↑ SUMMIT当日の様子

一方で、定量で測れる仕事だけを対象にするのではなく、部署によって濃淡はありつつも、みんなが対象となるよう「縁の下の力持ちを称える賞」や「素晴らしいマネジメントでメンバーやチームの成長を大きく引きあげた人を称える賞」なども検討し、最終的には、チャンスはあるけれど誰もが取れる訳では無い、という塩梅を叶える賞の設計ができたと思っています。

【第一回のSUMMITで設定した賞】
全社MVP
新人賞(中途と新卒を設定。新卒に関しては、25年入社が0期生のため、第一回時点では中途のみを実施)
縁の下の力持ち賞
ベストマネジメント賞
ベストチーム賞

選考基準の設計の難しさと、推薦がはじまり見えてきた可能性

arakin)まず、社内から推薦を集めましたが、当初100件くらいは集めたい、と思っていたものの、結果的に256件の推薦が集まったんです。募集から1週間も立たずに予想を越える推薦が集まり、その時点で良いイベントになるかもしれないと感じました。

当初、表彰制度の実施には反対意見もあったんです。他の会社で、うまく設計されておらず形骸的になってしまった表彰制度を経験している人もいたので、いいイメージが持てない人もいたと思います。
でも、たくさんの応募が集まったことで、運営チームとしては前向きなイメージを得られた気がしました。

arakinさん画像_2

選考は、推薦コメントなどをマネジメント層によってある程度人数を絞っていき、最終的には経営陣が集まって受賞者を確定する最終選考会を行いました。

最終選考会では、候補者の所属する部門を管掌しているVP、CxOが忖度なく熱い意見を戦わせ、難易度も決定の基準も非常に高いレベルの審査となりました。検討のすえ、受賞者無しと判断する賞もあり、この議論を経て選ばれた人たちなら、誰からみても納得感が高いのではないか、と感じられる結果になり、想定していた課題解決にしっかり繋がるかもしれないと感じ始めていました。

あとはカルチャーを守ったり、一体感を生むという当初の目的も果たすためのクリエイティブや演出がハマればかなり良い施策になるかもしれないと感じていました。

ハレの日感と独自性をめざしたデザイン

ー 今回のSUMMITで、デザイン面ではどんなことを考えながら進めていきましたか?

dose)まず最初に、CEOの芹澤さんにヒアリングをして、どういう場作りをゴールにしたいか、の意見を聞きました。そのときに、弊社が受賞した「スタートアップ大賞」の表彰式で「ハレの日感」を強く感じ、自分の人生において記憶に残る1日になったという話をしていたんです。
なので、SUMMITも、受賞者にとって記憶に残る「ハレの日」になるような場作りをしよう、というところからスタートしました。

ただ「ハレの日」の解釈や見せ方はさまざまです。
おごそか、豪華絢爛、ワイワイするお祝い感、などキーワードを考えるなかで、SmartHRらしい表彰式の演出ってどういうものなんだっけ、ということを軸に考えていきました。

おごそかで重厚なイメージや豪華絢爛できらびやかなイメージは、表彰の場としてはわかりやすいけれど、SmartHRのイメージとは違います。SmartHRのメンバーが参加したときに溶け込めるのか、を考え模索しました。

doseさん画像_1

表彰者を敬意を持って称える場であること、そして表彰式に参加する全社員もポジティブなお祝いの気持ちで参加できる場を目指して、プリズムの輝きを軸に、表彰の場としての輝き感と、功績をたたえるためのキラメキ感を持たせるデザインに着地したんです。

SUMMIT当日の様子画像_2

arakin)デザインを通じて、他社にはないSmartHR独自の雰囲気に満ちた空気感が作れたと思っています。もし金屏風が出てきたら「うわ、ついにSmartHRでもこういうのが始まったんだ……」と思った人もいたはずです。そういったアレルギーを出さないようにしながら、でも表彰にふさわしいと思えるデザインは絶妙なバランスで成り立っていたと思います。

dose)SmartHRはこれまで中途オンリーで採用をしていたので、これまでの会社でさまざまな文化に触れてきた人が多く、他社のイメージや事例で見様見真似の「表彰式っぽさ」にしてしまうと、劣化版になってがっかり感が生まれてしまいます。
オリジナリティがあって、質の高いものに仕上げていくこと、は絶対条件でした。

表彰のキラキラしたイメージは担保したいけれど、SmartHRは厳かな輝き感よりもカジュアルな雰囲気が強いので、わかりやすいハレの日感とオリジナリティのバランスを取るのはすごく難易度が高かったです。

arakin)前提としてSmartHRの人は、他と同じことをやりたくないと思う人が多いんですよね。

dose)独自性がある方がみんなも喜んでくれるのは分かっていたので、最終的に「プリズム」という軸を見いだせて良かったな、と思います。

山の頂を目指す。「SUMMIT」というネーミングに込めたもの

ー 表彰制度をSUMMITというネーミングにした背景も聞かせてください

arakin)ネーミングを考えるにあたって、まず最初に全社員に向けてざっくばらんなアイディア出しをお願いしました。そこで出てきた案のなかで、しっくりくるのは「山」になぞらえたネーミングの方向性でした。

SmartHRは「ヤマの図」という会社の成長のこれからを示した図を使っています。さまざまな文脈で、数ヶ月に一度は見かけるものです。そのヤマの頂上を目指す、という認識があるから、山に関連したネーミングはすごく自然な感じがしました。

arakinさんとdoseさんの画像

そこから運営チームで思考を重ね、山に関連するPEAKやclimberという案や、山に関係なくシンプルなSmartHR Awardといった案も出ていました。
そのなかで出てきたSUMMITも、実はチームのなかでも意見が割れていて、サミットと聞くと国際会議や大手スーパーマーケットのイメージが強い、という声もあったんです。

なので「SUMMIT=山の頂上」というイメージを作っていこう、という話はかなりしました。
名称をSUMMITで確定してからも、すぐには公開せず、ビジュアルを一緒にだしてミスリードを防ぎつつ印象付けることに。

SUMMITのロゴ

その甲斐もあって『SUMMIT』=国際会議やスーパーマーケットのイメージはもう社内にはなく、SmartHRでSUMMITというと表彰制度のことだという認識になりました。

こういう独自の用語がすぐに馴染むのはSmartHRの特徴です。
一方でハイコンテクストな文化をつくってしまう要因なのですが・笑。

dose)デザイン面では、名称がSUMMITに決まってロゴを作る段階で「SUMMIT=山の山頂」ということをどう表現するか迷いました。山のビジュアルをロゴに落とし込むにあたって、険しすぎるイメージの山やカジュアルすぎるイメージの山にしてしまうと、印象がずれてしまいます。

正三角形だとピラミッドのようにも見えてしまうので、最終的には末広がりでどっしりとした形の山に着地しました。これだ、という山の形状を決めて、そこに合わせるフォントを選ぶときも、さまざまに検証し、ロゴ全体でどっしりした感じや権威感を出せるよう工夫をしています。

ー そのあたりは、表彰で使うトロフィーにも反映されていそうですね。

dose)トロフィーの作成も紆余曲折がありました。アイディアを出すなかで多種多様なアイデアが生まれ「食べられるトロフィー」がいいのでは、みたいな意見も出てきて、SmartHRらしいトロフィーとは、の答えを見つけるのは結構大変だったことを覚えています。

doseさんの画像_2

そもそも、トロフィーってもらっても飾る場所がなくて持て余してしまうという認識はチーム内で共通認識として持っていたので、もらって嬉しいかどうか、や実用性を重視するか、といったこともアイディアを考える段階でかなり話し合いました。
もらったときに嬉しいものであることは大前提ですが、一方で、表彰式の際の演出小道具としての存在感も必要です。

そのあたりのバランスを取ることの難易度は高かったですね。
最終的に、場作りの一環としての、手触り(クラフト感)や、唯一無二であることを軸に、記念品を入れられるトロフィー型のパッケージが生まれました。

トロフィーの画像

90%以上の満足度と、80%以上のモチベーションアップという結果に

ー SUMMIT第一回は結果的にどうでしたか?

arakin)アンケートの結果、とても満足&満足が90.6%という素晴らしい結果になりました。モチベーションの変化に関しては80.6%の人が「大幅に高まった&高まった」と回答してくれました。また、ネガティブな印象を持った人は1%未満でした。

当初から2割くらいの批判はあったとしても、会社全体を見てプラスに働いているのなら良い施策であると考えていました。考えていたというか、覚悟をしていたと言ったほうが良いかもしれません。

表彰という制度は、全社員のなかから突出した人を選びますが、先ほどもお話ししたように、誰かを出し抜くのはよくないのでは、という思いもあったんです。
なので、結果としてSUMMITに関してネガティブな反応だった人が1%以下だったのはとても大きいことだと思います。
当初SUMMITの実施に反対していた人のなかにも、気持ちが変わった人が多かったという結果になりました。

MVP受賞者の画像
授賞式を見守る参加者の画像

予想以上だったのは、当日の受賞者からのスピーチです。

当日原稿の細かな内容は指定せず、授賞式の場でそのときの気持ちを語っていただきましたが、受賞者一人ひとりのコメントに、仕事への向き合い方や想いがこもっていて、非常に熱いメッセージにあふれていて、みんな引き込まれていきました。

もちろん場作りや、選考の納得性など、運営として最大限の準備をして臨んだ当日でしたが、最終的なSUMMITの成功をもたらしたのは、受賞者のみなさんのスピーチが決め手だったのかな、と感じています。

受賞したことを振りかざすような人は一人もおらず、受賞者が皆それぞれに哲学を持っていて、それがみんなにちゃんと届いたんだと思います。

2回目開催の難しさと、今後のSUMMITについて

ー 次回は、夏の開催となりますが、次のSUMMITに向けての課題感はありますか?

dose)デザイン面でいうと、クリエイティブはしばらく同じものを使うことで、イメージの定着と権威性の醸成を狙っていく予定です。でも同時に形骸化もしていくとは思うので、デザインの力で常にいい場作りをすることは心がけていきたいです。

arakin)初回が大成功に終わったことで、2回目の難易度は上がります。

初回の印象が良いほど、二回目以降の感動が下がってしまうのはよくあること。現実としてある程度それは受け入れた方がいいとは思いつつ、それでも毎回より大きな感動を生み出していく気持ちで挑みたいなと思います。

ー 次回に向けて、すでに取り組んでいることはありますか?

arakin)まずは賞を増やします。

この追加する賞に関しては、初回から設定しようとしていたのですが、初回はミニマムに始める意図があり省いていました。

その意味では、やっと想定していた賞の設計通りに実施できるのでさらに良い場になると思うので今から楽しみです。他にも、推薦や選考フローの最適化など細かなアップデートも多く実施していきます。
SUMMITが安定してくれば、毎回多くを変える必要はありませんが、まだまだ完成されてはいません。しばらくは、それを作っていくために、試行錯誤が必要です。

ー 今後の展望について何か考えていることはありますか?

dose)ゆくゆくは、社員全員が集まる大舞台にしていきたいと考えています。

社内で活躍している人を、みんなで表彰することで刺激を受けたり、自分もあの舞台に立ちたい、と仕事に全力で取り組むきっかけになったりと、社員のモチベーションを上げる流れをSUMMITを通じて生み出せたら、事業成長にもつながっていきますよね。

arakin)今回は、オンラインでの配信だけではなく、100名程度が実際に会場で視聴していたんですが、会場にいたメンバーの方が満足度も高かったんです。会場で見ていた人から「これは全社員が会場で見るべき」という声もあり、ゆくゆくはそんな生で見るべきイベントに育てていけたら、と思います。

arakinさんとdoseさんの画像_2

SUMMITは、単なる表彰制度ではなく、1000人を超える組織においてカルチャーを守り、一体感を醸成するための重要な取り組みとして誕生しました。初回開催で90%を超える高い満足度を獲得したSUMMITが、今後どのように進化していくのか。組織の成長とともに歩むSUMMITの今後に注目です。

取材・文/@Miranda(カルチャー室)
写真/@ishimayu(カルチャー室)

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