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SmartHR×SUNITEDで実現する情シス領域の課題解決 ─AI BPaaSと人の価値がつくるバックオフィスの未来

    SmartHRは2026年3月、情シスBPO事業を主軸とするSUNITED株式会社をグループ会社として迎えました。バックオフィス業務全般のオペレーションにおいて豊富な実績をもつSUNITEDとの協業により、SaaS単体では解決できない「情シス領域」の課題解決へと本格的に取り組んでいきます。

    今回は、SUNITED代表取締役の福富啓之さんとSmartHR取締役COO 倉橋隆文の対談を通じ、今回のM&Aの背景にある課題意識と、両社が描くこれからのバックオフィスのあり方について紐ときます。

    SaaSが当たり前となり、AIが急速に広がるいま、それでもなお残る「現場に根付かない」という壁。その壁を越えるために必要なのは何か。テクノロジーの進化を前提としながらも、あらためて「人が価値をつくる」とはどういうことかを見つめ直します。

    左:SUNITED福富さん、右:SmartHR倉橋さんの写真
    SUNITED株式会社 代表取締役 福富 啓之さん(写真左):2006年にブックオフコーポレーション株式会社入社。その後、IT統括部長として業務システム構築や社内コスト削減計画の策定から実行までを統括。新規事業にも携わる。その後、婚礼事業に関連する製造業、飲食業、サービス業などの内製事業に携わったのち、2019年よりSUNITED株式会社の取締役に就任。2020年より現職。
    
    株式会社SmartHR 取締役COO 倉橋 隆文(写真右):2008年、外資系コンサルティングファームであるマッキンゼー&カンパニーに入社し、大手クライアントの経営課題解決に従事。その後、ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。2012年より楽天株式会社にて社長室や海外子会社社長を務め、事業成長を推進。2017年にSmartHR入社、2018年1月より現職。

    情シス部門の本質的な課題解決を実現する、SUNITEDの「現場と経営の接着力」と「人間味」

    —まず、今回のM&Aの狙いについて聞かせてください。

    倉橋:SmartHRは2030年に向けた事業戦略として、従来の人事労務SaaSの枠を超え、BPaaS、ITコンサルティング、情報システム(以下、情シス)領域への事業拡大を急速に進めています。

    なかでも情シスについては、人事労務などバックオフィス部門と密接に関わりのある領域です。SmartHRでは2026年1月より「情シスソリューション事業本部」を立ち上げ、プロダクトに加え、役務提供を含め情シス業務を包括的に支援するサービス構築に取り組みはじめました。

    この背景には、企業内の情シス、あるいはDXにまつわる深刻な人材不足があります。これは日本全国、企業の大小を問わずあらゆる企業で課題となっており、私たちも、情シス部門向けプロダクトを提供し、日々お客さまに接する中で痛切に感じるところです。AIの普及もあいまってDXの必要性は加速度的に高まっていて、やりたいことはたくさんある。しかし時間とリソースが十分ではないがゆえに停滞してしまう。こういった状況を目の当たりにして、私たちが提供するプロダクトだけではこの課題を全て解決しきれるものではないと痛感しました。

    SmartHRがDXを通じて日本企業のさらなる生産性向上・業績強化に貢献するには、高品質なプロダクトに加えて、ボトルネックとなっている人材不足の課題を解消する役務提供も両輪で必要です。そこで、BPO(業務委託)とSaaSを組み合わせ、業務プロセスを専門人材が運用・代行する「BPaaS」に長けた企業とのM&Aを検討しはじめ、SUNITEDをグループ会社としてお迎えするに至りました。

    —SUNITEDの事業とその強みはどういったところにあるのでしょうか。

    福富:SUNITEDは情シスBPO事業を主軸に、集客、採用、IPO、ISMSなど認証取得、企業や製品のブランディングなど、多岐にわたる企業支援を行っています。SUNITEDの前身は事業会社のシステム部門で、私は統括部長を務めていました。その中で社内の情シス業務と並行してサービスの外販で利益を確保する仕組みをつくり出し、お客さまも増えていったところで、2019年にSUNITEDとして子会社化。事業譲渡を経て、現在8期目を迎えます。

    このような経緯をたどったのは、管理部門はとかく「コストセンター」と見られがちで、人材を確保しようにも十分な条件を整えるのに社内の納得が得られにくい状況があったことが背景にあります。ならば自ら外販によって利益を生み出し、プロフィットセンターとして機能すればいいのではないかと。

    そうして、上場企業も含め、大小さまざまな企業の情シス部門のサポートを始めました。それから少しずつ仲間が増えてきて、マーケティングやクリエイティブ、会計などそれぞれの得意分野で力を発揮してもらううち、サービス領域も広がっていきました。

    福富さんの写真

    —そういった経緯が、SUNITEDの支援領域の幅広さにつながっているんですね。

    福富:そうですね。そうした背景があるからこそ、私たちの強みも自然と形づくられてきました。

    一般的にDX導入の際には、経営や部門の課題整理はできているものの、現場への浸透に課題が残るといったケースも少なくありません。ツール導入が進んでも活用が定着せず、結果として現場の負担だけが増えてしまう、という状況も起きがちです。

    その点、私たちはもともと事業会社の中で、現場と向き合いながらシステムを運用してきました。だからこそ、施策やツールの導入も「どう現場に説明し、どう使ってもらうか」まで含めて設計することができます。経営と現場、その両方をつなぐ“接着”の部分まで担えることが、他社との大きな違いだと思っています。

    こうした関わりかたが信頼につながり、一度ご支援した企業とは長期的なお付き合いになるケースが多いです。ストック型の関係性を築けているのも、この成り立ちによるものだと考えています。

    倉橋:私たちSmartHRがSUNITEDをグループ会社としてお迎えしたいと考えた理由は、大きく二つあります。

    一つは、今の福富さんのお話にも通じるところですが、業務理解の広さと深さです。SUNITEDは事業会社の中で情シスを担ってきたからこそ、導入期の高揚感だけでなく、その後の運用フェーズで直面する難しさを熟知しています。経営との調整から、キッティングやデバイス管理といった現場の実務まで含めて理解している。この「現場に根ざした接着力」は、私たちがまさに求めていたものでした。

    私たちがいくら良いプロダクトを提供しても、お客さまにとっては業務の一部に過ぎません。周辺の課題も含めて支援できなければ、本質的な解決にはならない。だからこそ「システムと人での業務、両方をまるごと任せていただく」体制が必要であり、情シス部門の酸いも甘いも知り尽くしたSUNITEDの経験値はその中核を担っていただけるものだと考えています。

    もう一つの理由ですが、福富さんはじめSUNITEDのメンバーとお話ししていくにつれ、人間味を大事にしているなと感じたのも、大きく惹かれたところです。

    —人間味、とはどういうことでしょうか。

    倉橋:AIの進化によって多くの業務が自動化されていく中でも、最後まで残るのは「人が人に影響を与え、行動を変える力」だと思っています。信頼関係を築き、「一緒に進めましょう」と背中を押すことや、何かあったときに任せられる安心感をつくること。これは人でなければ担えません。

    だからこそ、これからの時代は相対的に人間力の重要性が高まっていく。その点で、SUNITEDの皆さんは人間らしさ、コミュニケーションの力を非常に大切にしていると感じました。

    福富:当社はリファラル採用が中心で、もともと小売やサービス業など、現場でお客さまと向き合ってきたメンバーが多いんです。そうした人たちは、相手に伝える力や合意形成の力が強い。

    システム導入では、どうしても業務の変化により部門ごとで不利益や利害の衝突が生まれます。それを現場に納得してもらうには、単なる技術的な説明だけでは不十分です。コミュニケーション力の高い人材がフロントに立ち、背景や意図を丁寧に伝えていくことが不可欠だと考えています。

    倉橋:まさにそこなんです。設計やスケジュール提案といった部分は、今後AIで代替できる領域も増えていくでしょう。しかし、実際に現場の行動を変え、プロジェクトを前に進めるのは人の役割です。そうした「人を動かす力」を持ったチームであることが、SUNITEDをパートナーとして選んだ決め手でした。

    倉橋さんと福富さんの対談写真

    プロダクトと役務を掛け合わせ、お客さまへ提供価値を広げていく

    —SmartHRとSUNITEDの協業によって、どのような価値を創出していくのか、構想を聞かせてください。

    福富:まず前提として、いま多くの企業で情シス部門の人材不足が深刻化しています。人手が足りない中で、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)の作成や設計、テストといった工程まで十分に手が回らず、結果として全体の品質が下がってしまうケースも少なくありません。

    そうした状況に対して、これまでの私たちは人の力を中心に支援してきましたが、プロダクトという「武器」は持っていませんでした。今回の協業によって、SmartHRという強力なプロダクトを組み合わせることで、より踏み込んだ提案ができるようになると感じています。

    倉橋:私たちも同じ課題意識を持っています。プロダクトは提供できても、お客さま側のリソースが足りずに導入や活用が思うように進まないケースは少なくありません。

    SaaSはもはや一部の先進企業だけのものではなく、全国のあらゆる企業で活用が求められる時代になっています。その一方で、人材不足はますます深刻になっている。だからこそ、プロダクトとあわせて専門人材による役務提供を組み合わせ、「最初の整理から運用まで、まるっと任せていただける」体制をつくることに大きな意義があると考えています。

    また、この協業はお互いを縛るものではありません。SUNITEDの支援領域をSmartHRに限定することもありませんし、私たちもすべての案件をSUNITEDにお願いするわけではない。あくまで、お客さまにとって最適な形で連携していくことを前提にしています。

    福富:はい。特定の枠に閉じるのではなく、さまざまな案件やパートナーと関わる中で知見を広げていくことが、結果的にお客さまへの価値にもつながると考えています。

    福富さんの写真

    両社で真正面から向き合い推進する「AI BPaaS」

    倉橋:一方で、SUNITEDさんとしっかり連携して取り組みたいと考えているのがAI BPaaSです。AI BPaaSとは、AIとSaaSと専門人材の力を組み合わせ、業務の設計から運用までを一体で担うことで、企業のオペレーションそのものを高度化していくサービスモデルです。

    現在、AIを活用した業務改革は活発化していますが、「活用したいが、どう使えばいいかわからない」という状況にある企業も少なくありません。ただでさえ不足しているDX人材に加えて、AIまで扱える人材となると、ハードルはさらに高くなります。

    そこで、業務そのものを引き受ける中でAIの活用まで含めて業務を完遂し、その成果を納品する。そうすることで、より多くの企業にAIを前提とした効率的なオペレーションを届けられます。結果として提供コストも下げられるため、お客さまにとっても、より利用しやすいサービスになるはずです。

    このAI BPaaSの開発にあたっては、他の取り組みとは一線を画し、SUNITEDとSmartHRが一対一で真正面から向き合って進めていくテーマと捉えています。

    —AI BPaaSは両社で推進していく。その意図について、もう少し詳しく教えてください。

    倉橋:このAI BPaaSは、まだ世の中に確立された形があるわけではありません。だからこそ、まずは私たち自身でつくり込む必要があると考えています。AI BPaaSはまだ発展途上の領域で、前提も仕様もどんどん変わっていく。最初から完成形を目指すのではなく、試行錯誤を前提に進めていくしかないんです。

    そのためには、お互いが信頼できるパートナーとして、クイックに作り、試し、修正していく体制が不可欠です。いわば身内として同じ前提で動ける関係でなければ、このスピード感は出せません。

    福富:実際に自分たちで使いながら、「ここはうまくいかない」「こう変えたほうがいい」とフィードバックを回し続ける。そのサイクルを高速で回していくことが重要ですよね。

    倉橋:まずはR&Dフェーズとして、AIを活用したBPaaSの形をつくり込み、SUNITEDで活用しながらブラッシュアップしていく。その後に外販できるフェーズまで完成度が高まった時点で、広く展開していく。この二段階で進めていく想定です。

    まだ構想段階の部分もありますが、1年以内には、AIを組み合わせることで従来比で明確に生産性が上がったと言える状態をつくりたいと考えています。

    たとえば、これまで1人で5社程度だった担当範囲を10社まで広げられることや、ヘルプデスクなどの業務のうち30〜50%をAIに置き換えられること。そこまで到達できるかどうかが勝負だと思っているので、かなり本気で取り組んでいきます。

    倉橋さんの写真

    AI時代だからこそ問われる「人が価値をつくる力」

    —SUNITEDとの協業、そしてAI BPaaSの開発を通じて、今後実現していきたい未来像について聞かせてください。

    倉橋:AI BPaaSにおいてAIを使いこなすのはあくまで私たちサービス提供側であり、お客さまの体験としてはこれまでのBPOと変わらず「仕事を任せれば完了する」というシンプルなものです。一方で、AIを組み合わせることで効率的に業務を遂行できるため、その分のコストメリットも還元できる。AI時代においては、「お客さま自身がAIを使いこなさなくてもよい」という点も、重要な提供価値の一つになると考えています。

    福富:BPOの本質的な価値は、ノンコア業務を外に出すことで、企業が本来注力すべき領域にリソースを集中できることにあります。たとえばパスワードリセットのような定型業務はアウトソースし、その分の時間をコア業務に振り向けられるようになる。それだけでも十分に価値があると思っています。

    将来的には、情シス業務だけでなくバックオフィス業務をすべてAI BPaaSで担える未来を描いています。そうなれば、企業としては経営と製造・販売チャネルを整えることで事業が成り立つ状態になります。成長期にあって組織のフェーズが変化する際にも、大小さまざまな企業の業務支援を行ってきた私たちだからこそ、企業ごとのケースに合わせて組織のアップデートを支援することができます。

    倉橋:AI BPaaSも、最終的には内製化を前提とした形にしていくこともできると考えています。業務が整い、AIも含めて運用できる状態になれば、そのままお返しすることもできる。そうした選択肢を持てること自体が価値になるはずです。

    企業の独自性や競争力に直結する部分は内製で担い、それ以外はアウトソースするという切り分けも重要です。まずは外部の力を活用して業務プロセスを整え、その上で必要に応じて内製化していく。そうした柔軟な選択ができる状態をつくることが理想だと考えています。

    福富:ただ、どこまでテクノロジーが進化しても、最後に重要になるのはやはり人だと思っています。社内の合意形成や意思決定、業務の変化を受け入れてもらうための説明は、やっぱり人と人同士が信頼関係をもって進める必要がある。そこは今後、どれだけテクノロジーが進化しても変わらないところだと思います。

    倉橋:AIが進化するほど、むしろ「人が人に働きかける力」の重要性は増していくはずですよね。どんなに仕組みが高度化しても、それを現場に根付かせ、実際の行動を変えていくのは人の役割ですから。

    福富:私たち自身も、もともと小売やサービス業など、人と向き合う現場で培ってきた経験を大切にしています。AIがある時代だからこそ、そうした人間力を、よりまっすぐに価値として提供できるようになってきたと感じていますね。

    テクノロジーはこれからも進化し続けますが、最終的に人を動かすのは人です。だからこそ私たちは、AIを前提にした時代においても、人が価値の中心にあるサービスを提供し続けていきたいと考えています。

    倉橋:その冒険は、5年や10年で終わるものではないと思います。だからこそ、これからどんな景色が見えてくるのか、すごく楽しみにしています。

    福富さんと倉橋さんの写真

    編集・写真/@okie

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