大学卒業後、SIerを経験した後にソーシャルゲーム開発やSNSプラットフォーム開発に携わる。2014年より開発メンバーとしてメルカリに入社、その後Engineering Managerとして開発領域を率いる。2019年以降、複数のスタートアップ企業でEngineering ManagerやVPoEなどの開発組織のマネジメント経験を経て、2024年10月にActing DirectorとしてSmartHRに入社。現在はDirectorとしてタレントマネジメント領域の開発組織を統括。
目次
社会課題の解決に向けて、テックで挑む舞台を選ぶ
—まずはSmartHRに入社するまでの濱本さんのキャリアについて聞かせてください。
エンジニアとしてのキャリアはSIerからスタートしました。その後、自社開発のプロダクトに関わりたいという思いから転職し、ソーシャルゲームのプラットフォームや開発を中心に担当。この頃から、エンジニアリングマネージャーの役割も担うようになっています。
そして2014年、新しいチャレンジを求めてメルカリに転職しました。メルカリではマネジメント職からまたソフトウェアエンジニアに戻り、開発メンバーとしてジョインしています。当時のメルカリはまだ社員全体でも100名に満たない時期で、エンジニアも15名ほどのチームで。マネジメント職が必要な組織体制でもなく、どんどん開発を進めて成果を出していくのが面白い環境でした。会社が成長してエンジニアの人数も100〜300名ほどに増えた2017年頃には、改めてマネジメント職に就くようになりました。
その後はSmartHRに入社するまで二社を経ています。いずれもテクノロジーで世の中の仕組みを改善することにチャレンジしている企業で、その点に魅力を感じていました。
—キャリアを通して、テクノロジーを活用して新しい価値を社会に届けていくことにチャレンジしてきたんですね。
そうですね。SmartHRも、自分の子どもたちが働くようになった時に使ってくれたら嬉しいなと思っています。
これはSmartHRに入社した思いにもつながるのですが、開発組織のマネジメント職に就いて生産性向上など組織の改善に取り組むうち、自社の組織だけでなくもう少し広い視点で、社会に対して何か良い影響をもたらすような仕事をしたいと考えるようになったんです。HR領域やタレントマネジメント領域で、プロダクトを通じて日本の生産性向上に寄与できるようなプロジェクトに関わりたいなと。
—なかでもSmartHRを選択した決め手はどんなことだったのでしょうか。
大きく二つあります。それまでさまざまな会社で働いてきましたが、私にとってはミッション・ビジョン・バリューに共鳴して自分の役割を果たしていくのがすごく楽しいんです。役割はビジネス、人事、エンジニアなどそれぞれに異なるけれど、同じ船に乗って同じ目的地を目指して進んでいると思えることが大事で。
SmartHRのミッションである「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」は、ミッション自体が手段ではなく、目的地を明確に示す旗印になっています。これが僕にとっては重要視した大きなポイントです。
二つ目の理由は、現在のSmartHRの企業としての規模です。メルカリでは100名未満から1,000名規模の組織になったところまで経験してきましたが、その先は未体験の領域。SmartHRは1,500名近い規模の企業になっていて、これからさらに大きく成長していくフェーズにあります。「『1,500人のその先』を経験できそうだ」と、僕自身のキャリアとしての挑戦も入社の動機に含まれていますね。
新制度の先駆けとして、文化を尊重しつつ変化を導く
—ここからはSmartHRに入社してからのお話を聞いていきたいと思います。
現在は技術統括本部・タレントマネジメントプロダクト開発本部でダイレクターを担っています。一般的には事業部長、本部長といったポジションですね。SmartHRではVP、ダイレクター、マネージャー、チーフというレポートラインが組まれていて、VPとマネージャーのあいだに位置する役割です。現在40〜50名の編成で、部署としては最も大きい労務開発本部に次ぐ規模です。
—SmartHRでは2024年7月から、Acting(代理)制度(※)を導入しました。Actingダイレクターからダイレクターになるまでのことを、具体的に聞かせていただけますか。
※Acting(代理)制度:事業・組織の急成長に伴うマネジメント層の強化を目的とし、外部採用をより適切に活用するための制度。外部からいきなり正式な役職に就く「パラシュート人事」に伴うリスクを軽減するため、正式任命までの準備期間として「Acting期間」を設けるものです。Acting期間は、正式に役職へ任命されるまでの準備期間と位置づけられており、既存社員と同様のマネジメント任命フローを経て、正式に役職に任命されます。2024年10月にActingダイレクターとして入社して、最初の3か月間は現任のダイレクターと併走する形でジョインしました。キャッチアップ期間としてタレントマネジメントのドメイン知識や業務を把握しながら、組織の課題を分析してきました。年が明けて2025年1月からは、Actingダイレクターのままダイレクターから立場を引き継いで、タレントマネジメント開発本部を単独でマネジメントするようになりました。この引き継ぎ期間を経て、さらにその3か月後の4月から“Acting”が外れて正式にダイレクターとして就任したという経緯です。
—キャッチアップ期間としての最初の3か月間を過ごしてみて、どう感じましたか。
3か月、長いようで短かったですね。知識を習得して顧客解像度を上げ、組織の強み弱みの把握をしっかりできる期間としては非常に充実していました。しかし難易度は割と高かったなと感じています。
—難易度が高かったとは、どういう点でそう感じましたか?
まず40〜50名のメンバーの顔と名前とIDを一致させるところから始まって。特にタレントマネジメント開発本部は、人事評価、サーベイ、業績レポートなど、ドメインの領域も広いですから、関わる方すべて把握するにはそれなりの負荷を要しました。
組織マネジメントの面で言うと、新たに導入した制度であるActingダイレクターとしてジョインした僕としては、既存の文化を尊重しつつ、変えるところと変えないところを見極めなくてはならず、よくよく考えて取り組まなければならないなと熟慮する期間ではありましたね。

強い自律組織の中で、ボトムアップとトップダウンのバランスをどう取るか
—Actingダイレクターの半年間を含め、SmartHRにジョインしてもうすぐ1年になる今ですが、改めてSmartHRの開発組織についてどのように捉えていますか。
これは創業時から受け継がれているカルチャーなのだと思いますが、非常にフラットで、合議に基づいてボトムアップで動く文化が強いと感じます。自律性も高く、これはSmartHRの強みだと思います。
今後、事業の成長に一層のドライブをかけていくには、トップダウンとボトムアップのバランスを考え直さないといけないフェーズにも差しかかっています。SmartHRの強みであるボトムアップ、自律駆動のカルチャーは保ちつつ、トップダウンも効かせていくことがより求められてくると考えています。
—過渡期にあって、マネジメントとしては難しいテーマでもありますね。
トップダウンを効かせながら、それぞれの部署の自律性を保つことは可能だと考えています。SmartHRのメンバーはミッションやカルチャーに強く共鳴してジョインしていて、基本的にめざすところは同じです。トップダウンで企業としての意思を伝えたあとは、各専門領域のプロフェッショナルを信頼して任せる。それぞれが自分の職能を活かしてパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を守っていくことが大切になってくると思います。
「上手な衝突」が成長するための変化を生む
—濱本さんが開発組織をマネジメントしていく上で重要視している点はどんなことですか。
SmartHRが非連続な成長をしている最中です。開発組織としては、持続可能性と再現可能な状態を確立し、プロダクトを通じて継続的にお客さまに価値提供できる組織にしていくことが非常に大切だと考えています。
たとえば新規開発をする際、「揮発性の高いコード」、いわゆる使い捨てになりそうなコードを書いてしまうと、それはリリースした瞬間に負債になるんですね。下手をすると3か月後には運用負荷に耐えられない事態にもなりかねません。立ち上げ期に許容しなければならない事情があったとしても、その後のリカバリーをきちんと検討する必要が生じます。これは技術的な観点でもそうですし、組織的な観点でも、属人性をなくして組織として継続して価値を届け続けられる状態をつくらなければなりません。
特に今のSmartHRでは、タレントマネジメント領域のプロダクトがそれぞれ異なるフェーズで林立しているので、さらに難易度は高いです。立ち上げフェーズにおいては、いかに早くサービスを届けられるかを主眼に置きながら、リリースしたあとの運用負荷も考え、トレードオフしながら開発を進めていく必要があります。リリースした直後は、立ち上げ時にトレードオフで選択した負債をリカバリーするのと、さらに機能拡張して価値を高めていく開発を同時に進めていかなければなりません。そしてリリース後は、お客さまのフィードバックを得ながらプライオリティを整理し、さらに価値を高めていく段階になりますし、ユーザーが増えることで増加するシステムの負荷を改善するためにコードを書き換えていく必要も出てきます。
プロダクトのフェーズによってやることも異なりますし、どこに優先してリソースを割いていくのか判断する必要もあります。もちろんメンバーがどうしたいかを優先するというのが基本スタンスですが、エンジニアたちの適性やモチベーションを見極めて適切にプロダクトにアサインしていくことも、マネジメントでは求められていることです。

——さまざまな企業で開発組織のマネジメント経験を積みあげてきた濱本さんから見て、SmartHRの開発組織の課題はどのように捉えていますか。
先ほどもお話ししたように、SmartHRのミッションやカルチャーに共感して入社している人ばかりですし、自律駆動で動けるメンバーがとても多いです。入社してからも、ギャップを感じることなく働くことができると思います。
半面、カルチャーマッチが非常に高く同じ価値観のメンバーが多い分、変革を生む力については工夫が必要な組織だと感じることがあります。これに関しては、これからも新しくジョインするメンバーも増えていく中で、今いるメンバーと上手に衝突して高め合うことができると、組織としてより進化できると考えています。
——上手な衝突、とは具体的にはどんなことが挙げられますか?
基本的には現場のメンバーが意思決定をしていく際、共通の課題に対して異なるアプローチが出てくるなど、視点や価値観の違いによる意見の違いが生じることがあります。
たとえばアーキテクチャを例にすると、技術的なトレンドで会社としても取り組むべきという意見と、これまでの社内での開発の歴史を踏襲して既存のアーキテクチャを尊重するという意見が出てくることがあります。これは、ある起こるべくして起こる衝突です。ここでどちらか一方を押し通すのではなく、一度ちゃんと衝突する、議論を交わした上で最終的な判断を出していくことが大事なんじゃないかなと。
—既存の価値観と新たな価値観が同じテーブルに上がって、議論することができる土壌をつくる必要があるということでしょうか。
議論の土壌もですし、良い衝突を起こすための基準軸、ガイドラインを会社として整備していくことが必要だと考えています。今、社内ではいろんなチームがそれぞれにガイドラインをつくっていて、いわば発展途上なんです。各チームで判断している状況からさらに大きなガイドラインを明確に設定することで、良い衝突をもっと生み出していきたいですね。
今のSmartHRにとって必要なのは、「成長するための変化」を生み出すことだと考えています。これまで培ってきた文化を破壊することでは決してなくて、良い文化はリスペクトすることを前提に、良い衝突を生み出してさらなる成長につなげていくことを考え、実行していきたいですね。
事業成長のキーを握り「勝つための一手」を編み出す醍醐味
—今後、タレントマネジメント開発本部として取り組んでいくべきことはどのように考えていますか。
SmartHRのタレントマネジメント領域は、今まさに山頂に向けて歩みを進め始めている途中です。お客さまに対する課題解決、価値提供を拡大するためにはまだまだ機能も十分ではなく、やるべき課題は山のようにあります。
プロダクト間の連携やそれに伴うチームの連携も必要で、より横断的な施策に取り組めるように組織構造も変化させていきます。事業の成長と組織の変化に伴い、メンバーもマネジメント層も、あらゆるレイヤーの人材を求めています。
—濱本さんにとって、SmartHRでマネジメント職として働くことの面白さはどんなところにあるのも聞かせてください。
SmartHRはフラットな組織の性格を持ったまま大きく成長してきた組織です。1,500名規模にまで組織規模が拡大した今、マネジメントレイヤーの充実とその機能が、今後の成長に関わる重要なキーの一つとなっています。人材採用、育成、組織の整備などさまざまな面で強化していくべきところですが、その中でマネジメント職として、「勝つための次の一手」を自分の手で編みだしていけることが、今、一番面白いところだと思っています。
また、マネジメント職は、チームで成果を出すことが自分の成果にもつながっていく役割です。企業を成長させるドライバーとして、経営と組織、組織とチームメンバー間の結節点として成果に関与貢献できることが面白さだと個人的に思っています。
5年後の2030年には、今成長過程にあるタレントマネジメントのプロダクトが業界1位になっていて、それを支える開発組織がしっかり立っている状態をイメージしています。自分がそこを率いる存在になっていたいですし、さらに一緒にそれを託せる人が横に2〜3人いるような強い組織になっていたいですね。

編集・写真/@okie





