2015年、新卒で大手企業向けERPベンダーに入社し、営業に従事。2019年SmartHRに営業職として入社後、2020年より九州支社の立ち上げおよび支社長を務め、組織構築と事業拡大を推進。2023年より営業組織を管掌し、2026年より現職。
「もっといろんなことをやりたい」から始まった、九州支社の立ち上げと覚悟
ー まずは、SmartHRに入社されるまでのご経歴を教えてください。
生まれは福岡県北九州市で、大学まで福岡で過ごしました。2015年に大手企業向けのERP(統合基幹業務システム)の営業職としてキャリアをスタートしました。そこで約4年半セールスを経験して、2019年9月にSmartHRに入社しました。SmartHRは2社目になります。
2026年1月からは、コマーシャル領域(従業員数201〜500名)における、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス組織を管掌するVPとして働いています。
ー 入社後はフィールドセールスとして東京でキャリアをスタートされていますが、その後、九州支社の立ち上げを経験されています。どのような経緯があったのでしょうか。
入社して4、5か月経った頃、当時のセールス組織のトップだった中尾さん(現 グロースマーケット事業本部長(VP of Market Business))と話す機会がありました。当時27歳の私は、そこで「セールス業務に加えてもっといろんなことをやりたい。そのためにベンチャーに来たんだ」とぶつけたんです。ちょっと調子にのるというか、背伸びをしていたタイミングでしたね(笑)。
その思いを伝えたとき、中尾さんから「じゃあ、今のセールス組織の課題は何だと思う?」と問われて。そこで私が挙げたのが地方へのアプローチです。当時のSmartHRは東京オフィスしかなく、地方のお客さまに対しては、お問い合わせをいただいて初めて商談するという受け身の姿勢でした。これでは将来的に機会損失につながるのではないか、と。
特にコロナ禍以前の地方のお客さまにとって、SaaSはまだなじみの薄いものでした。私たちがアプローチしなければ、そもそも知っていただく機会すらない。先に他社がアプローチしてしまえば、シェアを覆すのは非常に困難です。だからこそ、こちらから仕掛けていく必要があると伝えました。
中尾さんはその話に真剣に耳を傾けてくださり、「地方の開拓は、通常の営業活動を100%やったうえで、プラスアルファでやりましょう。九州の活動を理由に、今の営業目標を下げることはしない。その覚悟があるならやってください」と言ってくださったんです。結果的に、この会話が九州支社の立ち上げにまでつながっていきました。
どれだけ大変になるか想像もつきませんでしたが、このハードなチャレンジにはワクワクしましたね。営業として成果も出しながら、さらに新しい価値を自分でつくりだせる。そこに大きな魅力を感じました。

手探りの業務で変化したマネージャーとしての意識
ー 九州支社長に就任されてからは、どのような業務を?
九州支社には一人で赴任したので、いちプレイヤーとして営業活動をしながら立ち上げを始めました。現地採用のためにエージェントを開拓したり、銀行や社労士事務所といったパートナーとの関係を構築したり、現地のSaaS企業と共同でイベントやセミナーを開催するなど、ネットワークづくりにも奔走していました。プレイヤーとして営業をしつつ外部のさまざまなパートナーさんに動いてもらう、という経験は難易度が高かったですが、その分大きな学びになったと思います。
ー その後、セールス組織のマネージャーに就任されていますね。
はい。当時はエリアで組織が分かれていたので、私は九州と東海の営業チームを管掌することになりました。そこで初めて、自分とメンバーの間にチーフがいる、いわゆる間接マネジメントを経験したのですが、これが支社の立ち上げよりもはるかに難しかった。
難しさを感じたのは2点です。1つは、メンバーに何かを伝える際に、いかにチーフに納得して動いてもらうかの勘所が全くわからなかったこと。もう1つは、九州は自らがゼロから立ち上げたチームだったのに対し、東海はすでにある程度できあがっていた組織だったことです。自分がどう思われているか気にして遠慮してしまったり、なかなか意図を伝えきれなかったりと、最初の半年間は本当につまずきましたね。
もともと、私の強みは『調和性』でもあり、どちらかというと波風を立てたくないタイプでした。人にはっきり何かを言って動いてもらう経験が圧倒的に足りていなかったんです。
そのとき、当時の上長からかなりストレートなフィードバックをもらって。その後は、何かテクニックを使ったというよりは、言うべきことはちゃんと伝えようと決めて実行していきました。今でも大切にしていることですが、相手のことを本気で理解しようと努めること、そして、フィードバックは相手のためになる『ギフト』だと思いながら伝えることが重要だと、この経験から実感しました。

「やるべきことをすべてやる」粘り強い組織へ。自ら予算を引き上げる挑戦
ー 2023年にはエリア制がなくなり、全国のSMB(従業員500名以下の企業)向けの営業組織を、2024年にはダイレクターとして既存顧客向けのセールス組織も管掌されるなど、役割が変化していきます。
2023年に全国組織を管掌するようになってからは、東京と地方の営業スタイルの違いに直面しました。当時の東京のメンバーは『仕組み』を磨き再現性を上げていくことで受注効率を高めていく文化が強く、地方のメンバーは『この一件を取るためなら何でもやっていく』というスタンス。どちらが良い悪いではなく、この違いをどう埋めていくか、試行錯誤の連続でした。
ー 2024年にダイレクターになられてからの印象的なトピックスはありますか。
この時期の個人的なターニングポイントとして捉えているのは、会社が求めている予算よりも、あえて引き上げた目標を設定したことです。もちろん、自分で自分の首を絞める行為でもありますし、メンバーの方々に求める難易度も上がってしまいます。傍から見たら「何を考えているんだ」という感じですよね。
でも、当時の私には「会社の成長、これでいいんだっけ?」という危機感がありました。前年の営業組織は非常に好調で、会社が提示する目標ラインなら達成できるだろう、という手応えはあったのですが、このままだと組織はいわゆる『ハードな状態』を経験できず、強度が上がらないままだと感じたんです。
そこで少しストレッチした目標を立て、達成できるか分からないギリギリのラインを狙わせてほしい、と提案し、現場の皆さんにもお願いしました。
もちろん、メンバーには負荷をかけることになるので、本当にやっていいのかは悩みましたし、実際つらい思いをさせた面もあります。
ただ、この1年を乗り越えたとき、メンバーやチーフ、マネージャー陣の組織強度が明らかに高まったのを感じました。現在、一人ひとりが追いかける予算は年々上がっている状態ですし、それを求められる環境になっていっています。最終営業日までお客さまとやり取りを続け契約をいただいたり、他部署を巻き込んで、難しいと思われた案件を成功させたり。「凡事徹底」に加え、あらゆる手段を徹底的に考え、やるべきことをすべてやろう、という粘り強さが生まれたと思います。

矢印が増え続けるなかでの「コミュニケーションの難しさ」と面白さ
ー 2026年1月からVPに就任されました。事業が拡大し、組織が複雑化する今、どのような課題を感じていますか?
面白さとイコールですが、やはり課題を感じるのは『コミュニケーションの難しさ』ですね。事業本部制になり、Tier(従業員規模)と領域(プロダクト)で組織が分かれたことで、コミュニケーションの矢印が爆発的に増えました。調整ごとも増えますし、お互いの状況を汲み取る難易度も格段に上がっています。事業を前に進めたい、お客さまにいいものを届けたい、と全員が純粋に思っているゆえに、意見が伝わらなかったり、持っている知識や前提が違ったりして摩擦が生じてしまうこともあります。
だからこそ、私自身がハブとなってそれぞれの思いを咀嚼して伝えたり、コミュニケーションが生まれる場をセッティングしたりすることが今の私の役割であり、このフェーズの面白さだと感じています。将来的には私がハブにならずとも、自然発生的にお互いが調整できるような状態を作っていきたいと考えています。
また、一人ひとりが抱えているお客さまの数も多く、かつプロダクトが増えて平均単価も上がっている今、個人にはそれぞれの役割において「求められていることは何なのか」を改めて深く考え抜き、やるべきことを全てやり切ることを求めています。
同時に、組織としてはツールの導入による効率化など、仕組みで解決できる部分をしっかり整備していく。「個人」と「組織」の両輪をいかに走らせるかはとても意識していますね。

SmartHRの変化を見てきたVPが感じる、これからの可能性
ー 約7年間、SmartHRの変化を見てこられて、今どんな可能性を感じていますか?
提供できる価値の幅が広がり、お客さまに提案できるものが増えているのは純粋に面白い一方で、プロダクトが増えたことによる難しさ、カオスさは増しています。規模の拡大・成長とともに情報のキャッチアップや社内オペレーションの煩雑さも増しています。これは大きな伸びしろであり、この伸びしろを解消できれば、SmartHRが世の中に与えるインパクトは、今よりも格段に大きくなると確信しています。
もう一つ可能性を感じているのは、AIの存在です。自分たちのプロダクトにどう組み込むか、自分たちのオペレーションをどう変えるか。この大きな変化のタイミングに当事者として携われることに、危機感と同時に大きな面白さを感じています。変化を恐れず、とにかくやってみよう、という精神がますます重要になってくると思いますね。
ー 最後に、記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
私は、明確に『こうなりたい』という姿や就きたいポジションがあったわけではありません。目の前の課題や、組織の『負』に対して、自分がどう貢献できるか、どうすればもっとよくなるかを考え続けてきた結果が今につながっていると思います。もし、これまでの経験を活かしてより大きな組織や事業の課題解決に挑戦したいと思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度お話ししてみたいです。
取材・文・写真/okie(広報)





