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2026.08.24

「出社かリモートか」ではない。SmartHR流のハイブリッドワークとコミュニケーション設計について 

こんにちは。SmartHR CEO の芹澤(@masato_serizawa)です。

みなさんの会社は、出社派ですか? リモート派ですか?

2025年ごろから、テック業界でも「出社回帰」の流れが強まってきました。フルリモートを廃止してハイブリッドや原則出社に舵を切る企業のニュースを見るたびに「SmartHRはどうするんですか?」と聞かれる日々を過ごしています。

ところで先日、日本CTO協会が会員(CTO・技術責任者等85名)向けに実施した「勤務形態に関する実態アンケート調査」のレポートが公開されました。このレポートがとても示唆に富む内容だったので、今回はこれを引用しながら、SmartHRが出社とリモートワークのハイブリッドに「あえて」こだわり続けている理由について書いてみようと思います。

SmartHRはもともと「出社が大好きな会社」だった

意外に思われるかもしれませんが、SmartHRはもともと出社・対面コミュニケーションを重視する会社でした。
僕が入社した2016年以降ずっと全員が顔を突き合わせて働いていましたし、「対面で話して速く決める」ことが僕たちの強みのひとつでした。他社ではないようなリアルで会うことを重視した制度も色々ありました。

そんなSmartHRが初めて全社的にリモートワークを採用したのは、ご多分に漏れずコロナ禍です。つまり僕たちのリモートワークは、思想から始まったものではなく、完全に強制イベントから始まったものでした。

ただ、実際にやってみてわかったことがあります。それは、仕組みさえ整えれば、リモートワークでも十分に組織は機能するということです。ドキュメントを整え、情報をオープンにし、非同期のコミュニケーションを設計する。これらの積み重ねで、事業は問題なく成長を続けました。

そしてコロナが明けた今も、SmartHRはリモートワークを「あえて」続けています。当然、デメリットも感じています。それでも続けているのは、デメリットを上回るメリットがあると判断しているからです。

この「あえて」の中身を、順を追って説明します。

「出社かリモートか」という二元論の終焉

冒頭のCTO協会の調査によると、回答した組織の基本勤務体制はハイブリッドワークが76.5%と圧倒的多数でした。

一方で、ハイブリッドの中でも出社頻度や強制出社日の「正解」は全く収束しておらず、しかも勤務形態を問わず満足度には大きな差がなかったそうです。各社が自社の事業と組織に合わせて、自分たちの答えを模索している段階なのです。

つまり、「出社かリモートか」という二元論はもう終わっていて、論点は「自社にとって最適な働き方をどう設計するか」に移っている。これが業界の現在地だと思います。

SmartHRがこだわるのはリモートも出社もOKな「選べるハイブリッド」

SmartHRは本記事執筆時点(2026年8月)では全社的にリモートワークを採用していて、特に出社ルールはありません。各チームで必要に応じて出社・リモートの使い分けをしています。

この制度の根底にあるのは、出社・在宅という勤務方法を個々人が柔軟に選べることは、シンプルに働きやすさ、そして生産性に直結するという考えです。

ここで大事なのは「選べる」という部分です。モクモクとこもって作業したいのか、膝と膝を突き合わせて対面で議論を煮詰めたいのか。達成したいことによって、最適な手段を能動的に使い分けられる状態が良いのです。

CTO協会の調査の自由記述にも、こんな声がありました。

一番大事なのは選択肢があること。なので、強制出社があるハイブリッドではなく、選べるハイブリッド。

まさにこれです。SmartHRがこだわっているのはリモートワークそのものではなく、「選べるハイブリッド」という状態なのです。

実際に運用していても、リモートは集中と効率に強く、対面は議論の質や関係構築に強い。リモートと出社は得意領域が違うと日々感じます。
だからこそ、どちらかに寄せるのではなく、目的に応じて選べることに価値があるのです。

もちろん、デメリットもある

とはいえ、リモートワーク中心の働き方に課題がないかというと、そんなことはありません。僕が感じているデメリットは大きく2つあります。

ひとつは、ゼロから関係性を構築する場合、リモートメインだと時間がかかること。

すでに信頼関係があるメンバー同士ならリモートでも円滑に仕事が進みますが、新しく入社したメンバーや新規立ち上げのチームにとっては、関係性の土台作りにどうしても時間がかかります。

もうひとつは、成果を出すことに行き詰まってしまったときのフォロー手段が限られること。

隣の席の社員が異変に気づいて声をかける、みたいな偶発的なセーフティネットは、リモート環境では機能しにくいです。

実はこれ、僕たちだけの悩みではないようです。
CTO協会の調査でも、制度見直しの目的として上位に挙がっていたのは、目先の生産性向上そのものよりも、育成やオンボーディング、カルチャー醸成といったテーマでした。

つまり各社を動かしているのは「生産性」より「関係性」の課題なのです。もっともこれは生産性との対立ではなく、関係性への投資こそが中長期の生産性や事業成果に効く、という判断の表れなのだと思います。

「関係性」の課題は「設計」で小さくできる

では、デメリットを放置しているかというと、そんなことはありません。SmartHRでは「非同期の設計」と「対面の設計」の両輪で、デメリットの最小化に取り組んでいます。

① 非同期側の設計は「情報をオープンにする」こと。

リモートワークの大敵は「情報やコミュニティから取り残される感覚」だと思っています。SmartHRではリモートになるずっと前の創業期から「オープン」をカルチャーの柱に据えており、Slackのチャンネルは原則全社員にオープン、マニュアル・議事録・制度は部署を問わず誰でも読める形で蓄積しています。

さらに毎週の全社集会と半期ごとの全社キックオフで、事業の進捗や経営方針をタイムリーに共有しています。情報の透明性を徹底的に担保することは、もはやリモートワーク運用の標準装備と言っていいと思います。

② 対面側の設計は「偶発に任せず、意図的に作る」こと。

出社を前提としないからこそ、対面の機会は意図的に設計する必要があります。前述の「ゼロからの関係構築」問題への対策として、オンボーディング期間には対面での交流機会を集中投資しています。

また、部活動、飲食補助による対面コミュニケーションの活性化も行っています。
例えば、SmartHRのオフィスには巨大なスケルトンの冷蔵庫があり、18時以降自由にお酒やノンアルドリンクが飲めるようになっています。これは「オフィスでお酒が無料で飲める」というだけでなく、エントランス近くの目立つ場所におくことで、出社した際に突発的に社員と飲み会を開催したくなる設計となっています。

このように、社員が自律的に対面でのコミュニケーションを取れるよう、各種制度や補助を組織規模やフェーズに合わせてアップデートし続けています。

ツールによる非同期の効率化と、意図的に設計された対面機会。この両輪でデメリットを最小化していくのが、僕たちの現在の設計解です。

とはいえ、一番大切なのは「オンラインのテキストコミュニケーション設計」ではないか

と、ここまで制度やイベントの話をしてきましたが、実は最近、こう思っています。

SmartHRのリモートワークがうまく回っている一番の要因は、オンラインのテキストコミュニケーション設計なのではないか、と。

SmartHRは創業当初から、Slackを軸にコミュニケーションを組み立ててきた会社です。コロナ禍でリモートワークに移行するはるか前から、隣に座っているメンバーとも必要があればSlackで会話するのが日常でした。そしてその会話は「メールの置き換え」ではなく、最初からチャットネイティブな様式で行われてきました。

  • emojiによる軽量な意思表示
    「見たよ」「賛成・同意」「対応します」がリアクションひとつで伝わる。カスタム絵文字で絶妙なニュアンスも表現。確認のためのやりとりが激減し、発言への心理的ハードルも下がる

  • オープンなスレッド議論
    やり取りをパブリックチャンネルのスレッドに集約することで、その場に参加していなかったメンバーも後から内容を確認できる

  • 自由なSlack Nameの設定
    各人が呼ばれたい名前を決め、Slack上はもちろん、現実世界でもその名前で自然と呼び合う。フラットな関係性を構築。

  • ミーティングの実況文化
    各ミーティングには必ずと言っていいほど実況スレが立ち上がり、参加者がワイワイと自由闊達なコメントを投げ合う。経営会議や全社会、取締役会にすら実況スレが存在。

CTO協会の調査で生産性低下の要因のトップに挙がっていたのは「テキストコミュニケーションのコスト増加」でした。つまりテキストコミュニケーションは、リモートワーク最大の弱点なのです。

でも、逆に言えば、このコストを文化レベルで下げられている組織は、リモートワーク最大の弱点をあらかじめ克服できていると考えられるのではないでしょうか。

制度やイベントの設計だけでなく、リモートワークの土台となるチャットネイティブな会話文化が創業期から醸成されていた。これが、SmartHRでリモートワークがうまく機能している理由ではないかというのが僕の仮説です。

働き方は「与えられるもの」から「設計するもの」へ

CTO協会のレポートは、働き方はもはや「与えられるもの」ではなく「設計するもの」になっており、その設計にどう関わるかが一人ひとりの納得感を左右する、と結ばれていました。本当にその通りだと思います。

出社かリモートかという二元論に答えはなく、あるのは「自社の事業と組織に合った働き方の設計」だけです。

SmartHRにとっての現在の設計解が「選べるハイブリッド」であり、それを支える非同期と対面の両輪の設計、そして土台にあるチャットネイティブな会話文化です。
この設計解は事業や組織のフェーズによって変わりうるものですが、well-workingをミッションに掲げる会社として、新しい働き方を僕たち自身が模索し「設計」し続けること自体は、これからも変わりません。

理想の働き方を自分たちで模索しながら設計していく会社で働きたい方をSmartHRはお待ちしています。

Appendix

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