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2026.07.10

SmartHR事業戦略発表会2026:2030年売上1,000億円目標に向けた事業進捗とAIプロダクトの実績

SmartHRは、2026年7月に事業戦略発表会を開催し、2030年の売上1,000億円目標に対する現在の事業進捗や今後のプロダクト戦略について発表しました。この記事では、会見で芹澤が発表した内容を一部抜粋・編集してレポートします。

SmartHRのミッションと、2025年からの実績

SmartHRは、「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」というミッションを掲げ、企業活動を行っています。

会見時のCEO芹澤の写真

日本における「働く」という領域には、いまだに多くの非合理や非効率が存在しています。私たちは、テクノロジーと創意工夫をもってそれを解消し、誰もがポテンシャルを存分に発揮して働ける環境を作るべく、日々サービスを提供しています。
現在、SmartHRは祖業である労務管理に加えて勤怠管理や給与計算、さらにはタレントマネジメントや情シス(情シスソリューション)、従業員ポータルなど、バックオフィス全体を支える事業ポートフォリオへと進化しています。

会見のスライド。SmartHRの事業ポートフォリオの概要が掲載されている

2025年、SmartHRは企業のみなさまの人的資本経営の推進を支援するプラットフォームになりたいという方針を掲げ、その実現に向けた注力ポイントを3つ発表しました。あわせて、2030年までに1,000億円の売上を作るというマイルストーンを発表しています。

会見のスライド。人的資本経営プラットフォームへの進化を実現するための注力ポイントが記載されている

事業戦略の発表から1年。まずはプロダクトの成長実績について共有します。

会見のスライド。プロダクト実績が記載されている

この1年間、プロダクトの拡大は順調に進展しました。特に顕著なのは、情シス・従業員ポータル領域のプロダクトが大幅に増加した点です。注力ポイントとして「HR SaaS以外の領域への進展」を掲げていましたが、プロダクト数の面でも力強い進展が表れています。

一方で、労務領域やタレントマネジメント領域のプロダクトが進化していないわけではありません。これらの領域は、現在でもお客さまからのご要望や課題が大きい領域です。そのため、単純にプロダクト数を増やすのではなく、既存のプロダクト一つひとつを着実に磨き上げる進化を遂げてきたのが、この1年間におけるプロダクト開発の実績だと考えています。

そして、増加および進化したこれらのプロダクトが生み出した売上が、最新のARR(年間経常収益)の数値に表れています。

会見のスライド。SmartHRのARRのグラフが記載されている。

ARRとは、SaaSのサブスクリプションによる年間経常売上のことです。このグラフは、M&Aやグループ会社の売上、およびSaaS以外の収益を含まない数値です。

SmartHRは2026年7月に、ARR300億円を突破しました。SmartHRの純粋なサブスクリプションのみでの売上300億円という実績は、国内の業務システム市場においても大規模な数値です。これは、SmartHRが人事労務における基幹システムとしての着実な進化を証明していると考えています。
この300億円を構成する顧客層は、引き続き多様な状態を維持しています。SmartHRは特定の業種や規模に偏ることなく、日本全国のさまざまな企業の方々にご利用いただいています。登録社数も8万社を超えており、日本の企業の「働く」を支えるソフトウェアとして順調に進化しています。

またSmartHRは、この1年間で単体でのフリーキャッシュフローの黒字化も達成しました。SaaSは黒字化の達成が非常に難しいビジネスモデルとされていますが、この黒字化により、本業であるSmartHRを通じて得られるキャッシュフローを強固な収入基盤とし、今後M&Aや戦略投資へ投下できるようになりました。すでにM&Aなどの戦略投資は進んでおり、直近の約1年間で5件のM&Aを実施しています。

会見のスライド。SmartHR単体のキャッシュフロー率推移が記載されている

従業員ポータル領域とAIプロダクト

様々な事業領域が力強く成長している中、注目したいのが「従業員ポータル領域」です。従業員ポータル領域は、管理部門と従業員のコミュニケーションを円滑にするためのプロダクト群を提供する事業領域です。2025年に新規事業として立ち上げたばかりですが、2026年6月時点で獲得したARRが10億円を突破し、力強い成長を見せる領域へと進化しています。

会見のスライド。従業員ポータルについて掲載されている

従業員ポータル領域において、特に言及したいプロダクトが「AIアシスタント」です。
AIアシスタントとは、AIがチャットボットとして従業員からの問い合わせに対応する機能です。たとえば、就業規則や会社のマニュアルを事前にAIに学習させておくことで、AIがそれらの情報を元に従業員からの問い合わせに自動で回答します。

このAIアシスタントは、提供開始から1年で導入社数が900社を突破しました。導入されるだけでなく、問い合わせの自動回答数が累計で15万回を超えるなど、実際に日々の業務で活用される人気のプロダクトになっています。

実際にお客さまの事業に貢献する良い結果が続々と出始めていることに加え、10億円を超えるARRを創出できている。AIを活用した新規事業開発の事例として、非常に良い実績になったと考えています。

「新しい効率化」にある背景と人事戦略の重要性

私たちは、クラウドをベースに最新技術を用いた「新しい効率化」の実現に強いこだわりを持っています。働き方や技術が進化していく中、従来の働き方を単に効率化するだけでなく、全く新しい効率的な働き方そのものを提案したいという方針です。

会見のスライド。いまHRシステムに求められること のページ

こうしたこだわりを持つ背景には、以下の社会課題の存在があります。

  • 労働人口の減少

    日本は人口自体が減少しているのに加え、労働の供給において、選ばれやすい職業と選ばれにくい職業の差が広がっていく現象が発生。

  • 働く価値観の多様化

    終身雇用型から人材流動型へと変化が進み、転職を前提としたキャリア形成が一般的に。それに伴い、企業が「選ばれる会社」になるための戦略が重要となっている。

2つ目の人材流動化は、OS(オペレーティングシステム)レベルの変更を伴うものです。終身雇用・メンバーシップ型の採用から、人材流動化に対応するジョブ型の採用へと、企業は自らのOSを大きく変えなければなりません。今の日本の企業は、そうした大きな変化のただ中にあります。
つまり、企業は働き方や組織のあり方を変えなければ、事業を成長させられない状況にあり、この変化を乗り越えるためには、人材戦略や組織戦略が極めて重要になるのです。

では、組織を強くするための人材戦略や組織戦略とは、具体的にどのようなものでしょうか。

1つ目は、評価や報酬、等級などの体系の再構築といった人事制度の刷新。 2つ目は、採用力の強化です。人材の流動化が進む中で、優秀な人材を惹きつける戦略的なリクルーティング施策を実施していく必要があります。 3つ目は、最適な配置です。メンバーシップ型からジョブ型へと変化する中で、データに基づいた適材適所の配置や抜擢を実現していく必要があります。

会見のスライド。「強い組織」をつくる人事組織 について掲載されている

しかし、これらの人事戦略の実行は非常に困難です。そこでSmartHRは、人材戦略や組織戦略の実施を、人事データの側面から支援する立場になろうと考えています。

私たちはこれまで、業務の効率化を得意としてきました。入社手続きから組織構造の変更、日々の身上変化の記録に至るまで、SmartHRを活用することで効率的に行えます。その効率化の過程を通じて、私たちのデータベースには人と組織にまつわる膨大なデータが自然かつ正確に蓄積され、常にアップデートされ続ける基盤が構築されています。
この蓄積されたデータとAIを掛け合わせることで、人材戦略や組織戦略の実践をサポートする。そこまでをセットにして提供したいと考えています。

AIと人が協働するためには「コンテキストデータ」が非常に重要です。昨今のAIモデルの進化は目覚ましいものがありますが、いくらAIモデルが進化しても、各社固有のコンテキストデータがなければ、組織課題を特定することはできません。

私たちは優秀なAIに対して、SmartHRに蓄積された人と組織のデータを与えることで、各社独自の最適解を導き出せるAI活用環境を作っていきたいと考えています。

これからのプロダクト戦略/今後提供予定のAI活用プロダクト

SmartHRでは引き続き、「AIをプロダクトにどう活用するか」が今後のSaaSの進化において重要なポイントになると捉えています。現在、AIの活用方法について日々議論を重ねていますが、大きく分けて「従業員向けのAI」と「バックオフィス向けのAI」の2つを、それぞれ別の系統で進化させていく構想です。

会見のスライド。従業員向け・バックオフィス向けにAIエージェント機能を投入と掲載されている

まずは「従業員向けのAIエージェント」です。

管理者は日々SmartHRを使用しているため操作に慣れていますが、使用頻度の低い従業員はSmartHR内のどこにどのような情報があり、何ができるのか把握しにくいです。そのような場合でも、AIに問い合わせることで、給与明細や源泉徴収票などをすぐに確認できるようになります。また、あらゆるデータを網羅的に検索することで、「シフトを交代できる人を探す」といったアクションや問い合わせも可能です。

情報の参照にとどまらない、「働く」にまつわるあらゆる情報やタスクを案内できるエージェントを作っていくのが、従業員向けAIエージェントの発想です。

一方で「バックオフィス向けAIエージェント」については、状況が大きく異なります。バックオフィス担当者は日々SmartHRを使用しているため、どこに何があるかは十分に把握しています。担当者にとっての課題は、同じような作業を毎回繰り返さなければならない点です。

SmartHRが備えている多くの業務フローをつなぎ合わせ、AIが自律的に動いてタスクを完遂させること。これがバックオフィス向けAIエージェントのポイントです。いわば、バックオフィス担当者の右腕としてAIが立ち回り、SmartHRの設定や運用、定常業務をAIに任せてどんどん終わらせていく。そうした世界観を作っていこうと考えています。

そのいくつかの実践例として、今後提供を予定しているプロダクトをご紹介します。

「他社比較データ」

1つ目が「他社比較データ」です。これは、業種や規模ごとの年収、年齢構成、組織構造、部署別の人数の比率などを、手間をかけずに客観的に分析し、把握できるツールです。

会見のスライド。他社比較データについて掲載されている

人事戦略の策定において、ベンチマークデータとの比較は重要です。同業他社と比べて自社の年収水準は高いのか低いのか、人員は多いのか少ないのか。そうしたベンチマークとの比較を通して適切な人事施策の導出を、強力にサポートします。

なお、この「他社比較データ機能」に用いられているデータは、SmartHRをご利用いただいているお客さまのデータです。SmartHRをご利用のお客さまのうち、データ活用の許諾をいただいた企業のデータをAI技術を用いて統計化し、ベンチマークとしています。

本来であれば非常に個別性が高く、秘匿性の高いデータですが、お客さまに安心・安全にご活用いただけるよう私たちが統計化し、組織を横断して比較できる形で提供します。SmartHRの登録社数は8万社を超えており、この膨大な顧客基盤があるからこそ、精度の高いベンチマークデータの作成が実現できると考えています。

「他社比較データ」は、単にデータを提供するだけでなく、AIエージェントと連携させたり、AIのみならず人事コンサルタントによる活用を組み合わせて、より柔軟な示唆を出せるレベルに発展させていく予定です。

「AI HRBP※」(※プロダクト名は仮称)

AIによるデータ活用の実践として私たちが開発している2つ目のプロダクトが、「AI HRBP」です。

会見のスライド。AI HRBPについて掲載されている

これは、日本企業が直面している事業再編や社内人材の育成・登用といった課題にアプローチするためのプロダクトで、AIがSmartHRに登録された人事データを網羅的に検索・分析し、条件に合致する人材を検索できるサービスです。

HRBP機能に特化しているため、「英語が堪能でリーダー経験のある人はいませんか」「営業部門の次世代リーダーはいませんか」といった自然言語で欲しい人材の条件を指定できます。条件を入力すると、AIが素早く合致する人材を探し出し、ポイントを整理して教えてくれます。また、画面上で提案された従業員の詳細データを確認することも可能です。対話形式で条件の深掘りができる点も、対話を強みとするAIならではのメリットだと考えています。

会見時のCEO芹澤の写真

SmartHRはこれらの機能を通して、人事戦略の策定と実施を支援していきたいと考えていますが、大切なのは、これらの機能が「人事の仕事を奪うものではない」という点です。

AIの本当の価値は、答えを出すことではなく、試行錯誤のスピードを劇的に早めてくれることにあります。
AIツールを武器として、人事担当者がより質の高い試行錯誤を高速で行える環境を提案・提供し、さらに今後は、人事部門だけでなく、現場のマネージャーの方々にも広く使っていただける機能にしていきたいと考えています。

とはいえ、AI活用の実践に向けたハードルはまだまだ高いのが実情です。そこで私たちSmartHRは、システムの導入だけでなく、AIによるデータ活用のプロセスそのものも強力にバックアップするサービスも検討しています。専門のスタッフが人事のみなさまのパートナーとしてサポートに入り、課題の特定から成果の創出まで、ツールの利用を通じたプロセス改善を伴走するメニューも用意し始めています。

「人と組織のためのバックオフィスシステム」へ

私たちがこれまで10年半にわたって取り組んできた業務効率化には、まだまだ多くの余地が残されています。今後も引き続き効率化を進め、それによってより多くのデータが自然に蓄積される状態を作っていきます。

ただし、ゴールは業務の効率化だけではありません。効率化を通して蓄積されたデータを、協働のためのコンテキストとしてAIに渡し、AIを活用してさらなる示唆を得る。示唆を得ることで効率化がさらに進み、データが溜まればAIがもっと賢くなる。この好循環を回すことで、継続的に企業が良くなっていく仕組みを作ることこそが、私たちが考える「人と組織のためのバックオフィスシステム」です。

会見のスライド。人と組織のためのバックオフィスシステムへ のページ

人事データから組織を強くしていく。それを力強く実践できるサービスを引き続き作っていきたいと考えています。

※会見の本編動画も公開しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。

編集/okie (広報)
写真/arakin(CEO室)

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