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2026.09.28

カルチャーは定義しない。SmartHRが「問い続ける」組織である理由

「SmartHRのカルチャーを教えてください」と問われたとき、カルチャー室の室長として、私はいつも少し考えてしまうことがありました。

SmartHRには「オープン・フラット・遊び心」というカルチャーの標榜があり、「光」「偉業」「象」というバリューもある。けれど、それだけで私たちらしさを説明しきれる気はしません。むしろ組織が大きくなるほど、その輪郭は曖昧になっていくようにも感じていました。
1,500人を超え、2,000人規模へ向かおうとしている今、私たちは何を大切にし、何を変えようとしているのか。

2026年5月末、会社紹介資料のアップデートにあたり、これまでSmartHRのカルチャーとして記載していた「オープン・フラット・遊び心」を明記せず、バリューに焦点を当てる方向へ変更しました。
なぜそうしたのか。その背景にある考えを探るため、CEOの芹澤とあらためて対話しました。

この記事に登場するメンバー

  • 代表取締役CEO

    芹澤 雅人

    2016年2月

    入社

  • CEO直下 カルチャー室 室長

    Miranda

    2024年7月

    入社

「お客さまの課題から始める」は10年以上変わらない

Miranda:SmartHRの特徴や強みって、どんなところだと思いますか?

masato_serizawa:結構難しい質問なんですよね。僕はこの会社に10年在籍していますが、事業環境も組織も常に変化している。だから一言で表すのは難しいんです。

ただ、その中でも僕が好きなのは、お客さまと真摯に向き合っているところです。

「お客さまは何に困っているのか」「世の中は何を必要としているのか」を問いにして、まず課題から考える。そこから答えをつくっていく姿勢です。

これは僕が入社した頃から変わりません。

創業初期は自分たちが欲しいものを作る発想でしたが、それではなかなかビジネスにならず、人が欲しいものから考えるようにシフトしていった。その教訓は今も生きていると思います。

SmartHRはテクノロジー企業で、AIの活用も進んでいます。それでも根底にあるのは、技術ではなく課題の方なんです。

Miranda:課題を起点にすることで、目指す方向性が決まりやすい面はありますよね。

masato_serizawa:僕の好きなフォードの有名な話があります。

1900年代初頭、まだ馬車が主流だった時代に、フォードは民衆向けの手頃な車を世に出して成功しました。

「もし顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と言われただろう」という話です。

顧客は必ずしも、自分が本当に欲しいものや課題を理解しているわけではない。

今の僕たちは、お客さまが望む「速い馬」を作るのは得意だと思うんです。でも、課題の本質と向き合って「車」も作れる組織でありたい。

顧客起点であること。そして、顧客自身も想像していなかった価値を生み出すこと。その両方を目指したいと思っています。

カルチャーは定義した瞬間に古くなる

Miranda:カルチャーの仕事をしていると、いろいろなことを「定義したくなる」瞬間があります。組織がひとつにまとまって進むためには、共通言語や共通認識が必要だと感じるからです。

SmartHRはバリューを明確に言語化していますが、カルチャーそのものはあまり定義していません。そのあたりはどう考えていますか?

masato_serizawa:僕もコーポレートカルチャーについてはいろいろ考えてきたんですが、やっぱり言語化が難しいと思っています。

スケールアップ企業って変化が激しいじゃないですか。「これが私たちのカルチャーです」と定義した少し後には、もう状況が変わっていることもある。

そうすると、「定義したカルチャーを守ること」が目的になってしまう。僕はそこに怖さがあるんです。

だからSmartHRのような環境では、変わり続けることこそがカルチャーの核なんじゃないかと考えるようになりました。

チャレンジ精神や、不可能を可能にしていく姿勢、より良い解決策を考え続けること。そうしたものを行動として表したのがバリューで、その行動の積み重ねから「SmartHRらしさ」が生まれる、と考えた方が自然だと思います。

Miranda:企業がまだアーリーフェーズのうちは、「ありたい姿」を言語化してカルチャーにしていくことも必要だと思います。

一方で今のSmartHRでは、行動の積み重ねから生まれる「らしさ」を見つめ続けていく方が自然なのかもしれませんね。

バリューは覚えるものではなく、使うもの

Miranda:私たちの行動の軸となるバリューは、もともと7つありましたが、2024年に3つに変更しました。その背景を教えてください。

masato_serizawa:これはすごくシンプルで、ミッションも含めて7つもあると、全部を完璧に記憶して日常的に使うのは難しい。

※ かつてのSmartHRのミッションとバリュー

Mission:
社会の非合理を、ハックする。

バリュー(価値観):
・自律駆動
・早いほうがカッコイイ
・最善のプラン C を見つける
・一語一句に手間ひまかける
・ワイルドサイドを歩こう
・人が欲しいと思うものをつくろう
・認識のズレを自ら埋めよう

だから、もっと覚えやすく、使いやすい形にした方がいいと思ったのがきっかけです。

今は「『象』だけど、あえて問題提起します」とか、「それって『偉業』につながるかな?」と自然に会話に出てくる。

社員一人ひとりの行動の軸として、バリューがちゃんと機能しているんです。

Miranda:バリューは額縁に入れて飾るためではなく、普段の行動や意思決定、フィードバックで使われるためにある。そう考えると、3つに絞った意味も見えてきますね。

株式会社SmartHR 会社紹介資料より引用

オープン・フラット・遊び心は、定義しないから意味がある

Miranda:カルチャーの話に戻ると、SmartHRについて聞かれたとき、多くの社員が「オープン・フラット・遊び心」を説明してきたと思います。

ただ、私が2024年に再入社したときに感じたのが、「この3つの解釈って、ちゃんと揃っているんだろうか」ということでした。特に「遊び心」は、人によって捉え方も違いますよね。

masato_serizawa:正直、僕も説明するのは難しいなと思っています。

でも、「俺って面白いでしょ」って言う人に限って、あんまり面白くないじゃないですか(笑)。

会社も「うちは遊び心がある会社です」と自分たちで言うより、外から見てそう評価される方が意味があると思うんです。

Miranda:今回、会社紹介資料でも「オープン・フラット・遊び心」をカルチャーの核として明確に定義せず、バリューに重きを置く方針にしました。

私もそのスタンスには賛成ですが、言葉にしないことで消えてしまわないか、という気持ちは少しあります。

masato_serizawa:明確に定義しないからといって、「オープン・フラット・遊び心」が消えたわけではありません。SmartHRの要素を抽出すれば、今も出てくるものだと思います。

ただ、創業当初は独自の強みだったものが、この10年でスタートアップの標準的な要素にもなってきた。だから今のSmartHRがそれを明確に定義して、守るものとして置くことには違和感がありました。

カルチャーを醸成するためにDo / Don'tを定義するよりも、「SmartHRをどういう会社にしていきたいのか」をみんなで問い続ける風土であることの方が大切だと思っています。

Miranda:会社から提示された定義を守るだけではなく、一人ひとりが自分の考えや行動に問いを持ち、対話し続ける。その方が、変化する組織には自然なのかもしれませんね。

自由を守るために、ルールが必要になる

Miranda:SmartHRは「自由な会社」と言われることが多い一方、1,500人を超える規模になると、暗黙の了解だけでは難しい場面も増えてきました。

この規模でも比較的少ないルールで組織が保たれているのは、なぜだと思いますか?

masato_serizawa:正直、良くも悪くも、これだけ少ないルールでよくうまくやってくれているなと思います(笑)。

自由って魅力的に聞こえますけど、自由すぎる環境は実はしんどいんですよね。何をしてもいいということは、全部自分で決めなければならないということなので。

だから1,500人規模になれば、最低限のガードレールは必要です。組織が大きくなるにつれて、役割や責任を明確にする必要もある。

ただ、自由とルールは対立するものではなく、両立するものだと思っています。

必要なルールを整えながらも主体性は失わない。そのバランスを、今も探しているところです。

なぜ「SmartHRらしさ」は消えずに受け継がれるのか

Miranda:私が最初にSmartHRに入社した頃は60人ほどでした。一度退職し、2024年に再入社したときには1,000人を超え、今は1,500人以上です。

もちろん変化はありますが、組織の根底にある「空気感」は、それほど大きく変わっていないようにも感じます。

masato_serizawa:僕も正直、不思議なんですよね(笑)。どうしてなのか、再現性があるのかもよく分からない。

ただ、ありがたいことに、社外の方からもSmartHRには特徴や特色があると感じてもらえている。

それに惹かれて入ってきた人たちが、少しずつアップデートしながら、次に入ってくる人たちへバトンを渡す。

それが、10年経っても雰囲気を大きく変えずに、カルチャーの新陳代謝を続けられている理由なのかもしれません。

Miranda:では、その中でも「これは変わらず大切にしたい」というものはありますか?

masato_serizawa:誰もできなかったことに挑戦し、超えていく。創意工夫と技術で楽しむ。というマインドですね。

SmartHRで何かを成し遂げたい。不可能を可能にすることにワクワクできる。そういう気持ちは、これからも持っていてほしいです。

「本当にできないのか?」を問い続ける

masato_serizawa:AIの隆盛によって、これまでできなかったことが、できるようになってきました。だからこそ、これまでできなかったことに対しても「本当にできないのか?」と問い続けられるかは、とても大切だと思います。

スタートアップの面白さって、誰もできなかったことをできるようにすることだと思うんです。創意工夫や技術で可能性を広げる。そのワクワクを楽しめる人たちと働きたい。

そのためには、まずCEOである僕自身が問い、挑戦し、「まずやってみる」姿勢を見せる。それがマネジメントやメンバーへと伝わっていく。

そうした循環が、SmartHRらしさを次へつないでいくのだと思います。

あとがき

今回の対話を通じて、「SmartHRのカルチャーとはこれだ」という答えを簡単に定義しないことこそが、私たちらしさなのかもしれないと改めて感じました。

変化の激しい環境では、昨日の正解が今日も正しいとは限りません。だからこそ、「もっと良い方法はないか」「本当にできないのか」と問い続ける。

もしSmartHRのカルチャーに名前を付けるとしたら、それは「問い続けること」なのかもしれません。

取材/文 Miranda(カルチャー室)

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